リテンション
終身雇用もすっかり過去のものとなり、転職が当たり前となった今の時代。
有能な社員に突然転職されたり・・。せっかく採用した新入社員に早々に辞められて、採用や教育に掛けた経費が丸ごとムダになったり・・ と。
一方、厚生労働省の調査によると、新卒社員の3割以上が、入社から3年以内に辞めていくという結果も出ている。
今や『社員の退職』は、企業にとって重大なリスクと云える。そこで注目されているのが、社員を会社に引き止めるための取り組み「リテンション(Retention)」である。
リテンションとは、ノウハウを持つコア人材や将来重要な戦力となる社員の社外流出を防止する人事戦略のこと。日本語では「引き留め」「繋(つな)ぎ留め」と訳される。
社員が辞めることにより発生する、人材補充コストや機会損失、顧客流失の発生、場合によっては企業機密の流出を防ぐことが主な目的である。
リテンションは主に、「金銭的報酬」と「非金銭的報酬」に大別できる。
?金銭的報酬
リテンションの中でも比較的シンプルな形態である。給料の引き上げ、
業績連動給の導入等で、成果主義の色彩が濃いのが特徴。
?非金銭的報酬
給与以外で社員を引き留めていく取り組みで、一般的にリテンションと
いえばこちらを指すことが多い。
バブル経済が崩壊した1990年代以降、日本企業の多くは従来の年功序列型の人事評価制度をやめ、成果主義型の制度へと改めた。
しかし、成果主義には評価制度の構築・運営が難しいなどの欠点もあり、体質的に馴染まない企業も日本には多くある。
業績連動給にせよ、成果主義にせよ、「給料さえ、上げれば良い!」というものではない。
大切なのは“活躍できる環境”を企業がいかに作っていくかが重要である。
具体的なポイントを挙げると、次の4項目になる。
?成長の機会を設ける
?コミュニケーションを充実させる
?労働環境を改善する
?組織の魅力を高める
会社が自分を大切にしてくれている・・、自分の能力を活かしてくれている・・と、社員が思える環境整備ができれば、会社への帰属意識も高まり、退職者も自ずと減っていく。
そのキーマンとなるのは、社員たちと直接接する課長や部長といった中間管理職である。
以前、「アリの真実」という記事を書いた。「人音痴(ひとおんち)」の管理者では、いくら良い制度を導入しても駄目である。
彼らへの教育をいかにするか? いかに効果的に行うかが、リテンションの成否の鍵を握っているのである。