都市鉱山

都市鉱山とは、日本国内の家電製品やハイテク機器の中に含まれるリサイクル利用が可能な膨大な量のレアメタル希少金属)を指して鉱山に例えた言葉である。東北大学選鉱製錬研究所の南條道夫教授らが提唱したもので、近年のレアメタルの価格高騰に伴い、急速に注目度を高めている。

携帯電話やパソコン、薄型テレビといった機器を製造するには、金や銀、インジウムといった多様なレアメタルが不可欠。優れた通電性や触媒機能など、そのレアメタルならではの特性を持っているからである。もちろん、一つひとつの機器に含まれる量はごくわずか。しかし、携帯電話・PHSだけでも年間の国内出荷台数が5,000万台を超える現在、国内の電子機器の中にあるレアメタルは、その総量では膨大なものとなっている。

今年1月に、独立行政法人物質・材料研究機構」が国内の都市鉱山の埋蔵量を推定した資料がある。それによると、金で世界の埋蔵量の約16%、銀で約22%、インジウムで61%と、世界第1位の埋蔵量と推測している。

レアメタルを含んだ家電やハイテク機器は、製造から早くて数年、遅くとも十数年で廃棄されゴミになる。しかし、ただのゴミではなくレアメタルを大量に含んだ“宝の山”なのである。

レアメタルは現在、歴史的な価格高騰局面を迎えている。?新興国が高度経済成長期に入り需要が急増した、?サブプライム問題に絡んで投機資金が商品市場に流れ込んだことなどが主な理由である。

レアメタルをリサイクルできる循環ルートや回収技術を整備し、都市鉱山に眠るレアメタルを有効活用できるようにしておく必要がある。

しかし、レアメタルを多く含む携帯電話やPHSの回収台数は低迷しており2007年度には過去最低の644万台と、ピークの2000年度の半分以下(電気通信事業者協会など調べ)に落ち込んでいる。ユーザーが端末の買い替え後にも、思い出の品として持ち続けているのが原因と考えられている。

同じくレアメタルが豊富なパソコンについても、リサイクル制度は既に設けられているが、実際に回収できているのは廃棄量全体のわずか十数%とみられている。

産業構造審議会環境部会がまとめた資料によれば、2004年に出た使用済みパソコン約747万台のうち、約3分の1の243万5000台が輸出業者の手で海外に流れたとみられている。中古パソコンの輸出により失われた金は、2004年度1年だけで数トンに及ぶとの推計もある。

もうひとつの側面は、輸出先の環境汚染。輸出された機器の多くは、輸出先の中国などで分解されて貴金属だけが取り出されることになるが、そのやり方が非常に安全性に欠けており、現地で鉛害などの深刻な環境汚染を引き起こしている。

ガソリン価格の高騰も、最近の値下がりで遠い昔の事のように思える。ガソリン価格が高騰していたときは、祖先から受け継いだ土地にたまたま石油が眠っていた産油国や、資源高を巧みに“演出”した投機筋の人間には、怒りや愚痴を言いたくなったものである。

メーカーも「資源は必ず枯渇(こかつ)する」という危機感を持っていたはずである。しかし、目先の企業利益の追求が優先され、資源を後生に受け継ぐ努力を怠っていたのではないか・・。

資源の多くを外国に頼る日本こそ、「資源の再利用技術開発」のリーダーシップを取ってもらいたいものである。