PMBOK(ピンボック)

PMBOK (Project Management Body of Knowledge)は、あまり聞き慣れない言葉かもしれない。

これは、プロジェクト管理手法の一つである。プロジェクト管理手法については、各方面でさまざまな議論が展開されているがPMBOKは、デファクトスタンダード業界標準)とも言われ、国内でも採用の動きが加速している。
ソフトウェアの世界では、最近この方式についての議論が活発になってきているが、実は他業種では(例えば、建設業等の製造業で・・)以前から導入が進んでいる方式である。
(ソフトウェアのような「未成熟な製造業」では、プロジェクト管理レベルは冗談にも高いとは言えない・・)

PMBOKは、米国の非営利団体であるプロジェクトマネジメント協会(Project Management Institute: PMI)が提唱する、プロジェクトマネジメントのための知識体系で、プロジェクトを進める上で必要とされる基本的な考え方や手順などをまとめたものである。

PMBOKでは、プロジェクトを構成する多数のプロセス(PMBOKでは44のプロセスを定義)を、その特性から?立ち上げ?計画?実行?監視コントロール?終結 の5つの大きなプロセスに分類されている。

更にこれらが、?統合?スコープ?タイム?コスト?品質?人的資源?コミュニケーション?リスク?調達 の9つの知識エリアごとに分けて定義されている。

もう少しわかりやすく説明すると、縦軸を9つの知識エリア、横軸を5つのプロセスとしたマトリックス上に、44のプロセスがプロットされているイメージである。(こちらの図を参照→PMBOK_taikei.JPGをダウンロード

PMBOKは、すべてのプロジェクトに、そのまま適用することを目指したものではない。プロジェクトを成功に導くための共通のノウハウを体系化したベストプラクティス(best practice: 効率的に遂行される業務プロセス)と考える方が適切である。

ソフトウェアやプロジェクト管理に対し見識が低い人間(企業のトップや上級管理職に多い・・)は、PMBOKを知って「これは、良い。 当社もすぐに全部を導入しよう!」と無理矢理全てのプロジェクトに全てのプロセスを導入しようとして失敗するケースがある。

現実には、PMBOKの中から適用可能な部分を取捨選択し、業界特有の要件などを加味しながら、個々のプロジェクトに最適な形で運用していくことが望ましいのである。

プロジェクトの立ち上げから終結に至るまで、この9つの知識エリアを統合的に管理していくことが目標であり、「計画」「実行」「監視コントロール」の3つのプロセス群を適切にまわしていくことが重要である。
これは、PDCAサイクルによって全体最適を図るのと同じ考え方である。

マネジメント対象に「リスク」が含まれていることからもわかるように、PMBOKでは「計画どおりに進むプロジェクトはまずあり得ない!」との前提に立っている。だからこそ、この3つのプロセス群を繰り返し実施することで、計画の変更や遅延などへの対応が柔軟に行えるようになるのである。

PMBOKを導入することにより、次のメリットがある。

?プロジェクトの「見える化」が図れる
 これまでのやり方で「何が足りなかったのか・・」「本来どうあるべきか・・」が見えてくる。
?全員の認識と言語体系の共通化が図れる
 個人の経験や勘を頼りにするのではなく、体系化された標準的な手法に従い、メンバー
 全員が共通の認識と言語体系のもとにプロジェクトを進行できれば、どこで問題が発生
 しているのか、何が問題なのかをいち早くとらえ、適切に対応することができる。

プロジェクトに関与する全員が、常に優先して守るべきものを考えながら、時間、コスト、品質のバランスを維持していくこと。これを可能にするのがPMBOKなのである。