左遷の哲学

この本は、伊藤 肇の書いた本である。昭和53年に出版された本であるが、今でもロングセラーを続けている。

実は私にとって、この本には大変な思い出がある。

10年以上も前の話になるが、当時の社長とはいろいろな場面で意見が合わず、会議でもよく衝突(私は、決してそうは思っていなかったが・・)していた。
社長は、どちらかというと「イエスマン」だけの意見を聞き、私のような反対意見を言う人間は排除するタイプの人間であった。
結局、私は子会社に飛ばされ4年間ソフトウェアの子会社に勤務した。この時、転勤の話を友人(当時、日本最大の自動車整備業団体の事務局長であった)に話したところ、仙台に出張していた彼が、急遽予定を変更し東京に戻り、渡された本がこの「左遷の哲学」である。

友人は、当時の私の荒(すさ)んだ気持ちを癒し、何とか立ち直って欲しいという気持ちから、この本をくれたのだと思う。

この本の中には、いろいろな著名人達の「挫折人生」が書かれている。 例えば・・

"電力王" "電力の鬼"と呼ばれた松永 安左エ門(まつなが やすざえもん)の言葉
「実業人が実業人として完成する為には、三つの段階を通らぬとダメだ。第一は長い闘病生活、第二は長い浪人生活、第三は長い投獄生活である。このうちの一つくらいは通らないと、実業人のはしくれにもならない」

闘病、浪人、投獄のそれぞれの逆境を乗り切って大成した明治・昭和の実業人が得た強さを説いている。彼らにその強さを与えたのはなんだったのか・・?

皆さんの中にも、私のような経験をされた方もいると思う。しかし、よくよく考えてみると左遷かどうかは「自分の気持ちのもちよう」で、どの様にも変わるものである。
所詮、左遷かどうかは狭い意味でのこと! 新しい場所に行けば、人間としてはまたいろいろな局面が現れ、面白いこともあるかと思っている。

4年間に得たことは沢山ある。外から自分の元いた会社を眺めると、実にいろいろなことが見えてくるものである。出向から戻ってからは、矢継ぎ早に当時思っていた改善案を実行に移してきた。

私は、人生の中で経験するもので「無駄なもの(経験)」はないと思っている。確かにその時は、いろいろと考えるだろう。しかし、それは一時のこと・・。

長い本社での勤務の後、九州・大阪、そして今は四国にいる。ここは、全国で一番小さな場所である。全体のシェアからみても、3%弱の価値しかない場所かも知れない・・。
しかし、ここにも社員はいるし、当社を支持してくれるお客様も沢山いる。この人達が、私のやることを見ていると思ったら、俄然やる気が出てくるものである。