問題・要因の本質を見抜く力を養う。

これは、先日あるプロジェクト・リーダーとの会話である。

「赤字工事になった理由は?」と聞くと、プロジェクト・リーダーは、「見積が甘かったと思います」と答えた。では、対策はどう考えるかと聞き返すと『見積審査を厳格に実施します..。』という言葉が返ってきた。

「見積が甘かった」といった一般的な内容だと、対策も月並みになってしまう。このように、課題の裏返しではなんの進歩もない。課題・要因をより具体的にブレークダウンするからこそ、対応策もより具体的になるはずである。

『必要なスキルを持った要員の絶対数が不足(XX機能担当者が3人不足、YY機能担当者が1人不足・・)』とか『ユーザーから無理な仕様追加要求が頻発しており、それを引き受けてしまう』というように、具体的に書き出す事が肝要である。

問題の本質を見抜く力は、口では簡単に言えるが、いざ実践となると中々難しいものである。そのほとんどは、経験により身に付くものだからである。

私が、日頃実践している「問題・要因を纏める方法」を書き出すと次の通りである。

 ?問題・要因は一般化せず、より『具体的』に書き出す。
 ?誰に(ユーザー、ベンダー等)起因するのかという『発生源』を明確にする。
 ?何に(スコープ、体制、計画、技術、リソース、管理、スキル・・)起因するのか
  といった 『プロジェクト管理領域』を明確にする。
 ?解決の『難易度(難、中、易・・)』を付ける。
 ?誰が一番効果的に対処できるかといった『対処の主体』を明確化する。

私の部門では、何十のプロジェクトが稼働しており、問題も日々発生する。立場的には、問題が発生したら直ぐに「判断」し「実行」しなければならない。

メンバーから寄せられるメールや議事録は、私にとっては貴重な情報源である。しかし、実際には前述したように具体的分析がなされていないものが多い。

特にビジネスの世界では、小さな問題であっても段々と致命的な問題となっていくケースが多々ある。間違った判断をしないために、メンバーから発信される情報は「正確」に「問題の本質が分かる」ようにして欲しいと思っている。しかし、現実は間違った情報で判断し、失敗することもある。間違った報告の原因は主に次の通りである。

 ?報告者自身が状況を正しく認識しておらず、間違った思い込みをしているケース。
 ?報告者が自分の立場を守ろうとして、意図的(もしくは無意識)にねじまがった報告をする
  ケース。

ほとんどが、?のケースだが正しい状況把握のしかたを身につけてもらうように根気よく指導するしかないと思っている。
起きている事象をもっとシンプルに分析し、客観的事実なのか、その人の主観なのかも明確にすべきである。

一方、?のケースは「必要以上に大げさに言う癖」「悪いことを言い出せない弱い心」など報告者自身の問題もあるが、報告を受ける側の姿勢も大きい。

前回、「アッティラ大王の統率のルール」という記事を書いた。企業には、悪い情報も迅速に伝わる「組織・風土作り」と、悪い情報に触れたとき「決断と対応のスピード」が問われているのである。