「江戸しぐさ」に学ぶ

江戸の町は、一年間に殺人事件が1件あったかどうかというほど平和であった。
お巡りさんが沢山いたかというと、南町奉行、北町奉行それぞれに定廻り(じょうまわり)の同心が6人ずつしかいなかった。それに臨時廻りが6人ずついて、合計で24人だったという。24人で江戸100万人の治安が維持できているはずがない。

では、どうして平和だったのか・・。お互いに仲良くしていくために、自分たちのしぐさを注意しあおうではないかという知恵があった。この知恵の集積が、「江戸のしぐさ」である。

上司が部下をリードするときでも、役に立つのではないかと思うので二、三紹介します。

狭い道をお互いに傘をさしてすれ違う時に、必ず「傘かしげ」というしぐさをしなさい。相手と反対側に傘を傾けなさい。また、人とすれ違う時は、「片引き」といって、右肩を引いてすれ違いなさい。

乗合船が今、まさに出ようとしている時、慌ててお客さんが1人飛び乗ってくる。先客たちは、船底に自分のこぶしをついて、腰を浮かせ1人分の空間をつくる。これが「こぶし腰浮かせ」である。

初対面の人に「年齢」「職業」「地位」を聞いてはいけないとされ、これを「三脱の教え」といいます。余計な情報が入ることで一種の色眼鏡で相手を見てしまい、その人の素顔や本心を見通せなくなると教えているのである。

江戸しぐさの考え方では、思いやりが基本である。特に、上に立つ者の「思いやり」が重要だと教えているのである。