第6次産業

これは、東京大学名誉教授の今村 奈良臣(いまむら ならおみ)氏が提唱した、新しい農業の経営形態である。

第六次産業という名称は、農業本来の第一次産業だけでなく、他の第二次(加工)・第三次(流通/販売)産業を取り込むことから、第一次産業の1と第二次産業の2、第三次産業の3を足し算すると「6」になることをもじった造語である。

今までの農業は、生産だけを担当していた。これからは、生産だけでなく食品加工、流通/販売にも農業者が主体的かつ総合的に関わることによって、加工賃や流通マージン等の今まで第二次・第三次産業の事業者が得ていた付加価値を、農業者自身が得ることによって農業を活性化させようというものである。

背景には、日本の食料自給率の低さと消費者の食に対する安全の高まりがあるといわれている。最近では、パート・アルバイト・派遣などの「非正規雇用者」の再就職先としても注目されている。

日本の食品自給率は1965年の73%から1975年度には54%と短期間に大きく低下。その後ほぼ横ばいに推移してきたが、1985年度以降再び大きく低下し、現在では40%台で推移している。

ではなぜ、食品自給率が低下したのか・・。まず、消費者の食の変化を挙げることができるだろう。米食からパン等の小麦へ変化することにより、米余りが発生。政府は、減反政策や補助金、新規参入を阻止する法制度の施行。これにより農業が、衰退の一途を辿っている。

また、我が国の農業政策の大きな誤りは、その8割が兼業の中小零細農家であることを無視していることである。専業農家兼業農家を同じ土俵で考えてしまっていることである。

専業農家は農地も広く、労力も十分にかけることができるが農業収入のみである。これに対し、兼業農家は農地が狭く、作業も休日中心になり、いわば農業はアルバイトのようなもので、生計は別の職業から得ている。

専業農家は、良質で付加価値の高い農作物を、兼業農家は品質や付加価値は下がっても労力のかからない作物を作ろうとする。消費者も高額でも品質の良いものを求める人もいれば、品質が劣っていても安価な農作物を必要とする人達もいる。
要は、双方の需要と供給のバランスをとることが重要であり、政策も区別して検討する必要があったのではないか・・。

先日、追加経済対策の裏付けとなる2009年度の補正予算が成立した。歳出総額が約13兆9000億円という過去最大の大型補正である。ばらまき予算と、野党からは批判されている。

第6次産業のような、産業構造を変えるような所に国民の血税を使ってほしいものである。