知る権利

足利事件とは、1990年5月12日に、栃木県足利市内のパチンコ店の駐車場から女児(4歳)が行方不明となり、翌朝、近くの渡良瀬川の河川敷で遺体となって発見された事件である。

犯人として逮捕された菅家 利和さん(62)は、無期懲役が確定していたが、DNA鑑定の結果、冤罪(えんざい)の可能性が高まったとして先日17年半ぶりに釈放された。

誤認逮捕の元凶であるDNA鑑定に、最終的には助けられた、何とも皮肉な事件である。釈放された菅谷さんが、語気を荒げインタビューに答えている映像は、毎日のように放送されている。

菅谷さんの弁護人、佐藤 博史弁護士が裁判所側から「鑑定結果の公表は差し控えてほしい」という趣旨の要望を受けたことを明かしたうえで、鑑定結果を公にした。

DNA鑑定の精度は、昔からいろいろと指摘されていた。しかし、再三に渡る弁護側のDNA再鑑定の要求に対し、裁判所はそれを拒んできた。
当時の取り調べに関わった刑事・裁判官。そして誤ったDNA鑑定を行った科学警察研究所科警研)の技官。全員が、菅谷さんに謝罪すべきである。

どうしてこの様な冤罪が繰り返されるのか・・。捜査過程、裁判官の判断の過程・・。そのすべてを明らかにすべきである。

それが明らかになった時、本当の意味での「菅家さんの人生のやり直し!」が始まるのだと思う。国家賠償によって、経済的には償えても、17年半の時間は戻らないのである・・。

日本でも平成21年5月21日から裁判員制度が始まった。法律に無知な国民に、人を裁けるのか・・、裁判員守秘義務によって、運用上の問題が起きても表面化しないのでは・・ 等々、問題が指摘されている。

法律のプロの判断も重要だが、国民の「一般常識による判断」も大切である。しかし、「情報を見極めるチカラを養う」でも書いたが、裁判員がマスコミの報道や感情に左右された「誤った判決」だけはあってはならない。

足利事件は、我々に多くの問題提起をしている。我々も、この問題を風化させず、見守っていく義務があるように思う。