紐鏡(ひもかがみ)・・

先週末から母親の一周忌のため帰郷した。

私の郷里は、真田10万石で有名な信州松代である。信州松代駅から徒歩5分。真田公園の一角に句碑がある。(以前は、私の母校の正門にあった・・)

Img_090723 句碑には、「阿左由布仁 向比天曽見留 紐鏡 於乃我古古呂仁 卑我美阿留加登」と書かれている。ルビを振ると「あさゆふに むかひてぞみる ひもかがみ おのがこころに ひがみあるかと」である。

意味は、「朝夕に、鏡に向かって自分の顔を見てごらん。もしかしたら、自分の心に僻(ひが)む心がないだろうか。」である。

これは松代藩家老、恩田 杢(おんだ もく、1717年-1762年)が詠んだ句である。

恩田 杢は、破綻寸前にあった松代藩の財政を立て直し、優れた民政を行った人物として有名である。

財政再建を命ぜられたのは、恩田 杢がまだ41歳のときであり、家老とはいえ末席だった。財政再建を命じられた杢は、次の二つを、改革に専心する覚悟の証として宣言した。

 ?飯と汁よりほかは口にせぬこと。
 ?決して嘘を言わず、一度取り決めたことは必ず実行すること。

藩財政を立て直すためには、税収の回復と、負債の整理が不可欠である。この課題に取り組むため、全村から領民の代表を城に集め、対話集会を催した。
そして話し合いを尽くして領民の信頼と支持を得て、立て直しに成功したと言われている。

士農工商の身分制社会において、武士と領民代表が集会を行い、話し合いを通じて問題を解決するという方法は、前代未聞のことである。

恩田 杢が行った改革の内容は、『日暮硯ひぐらしすずり)』という書物に残っている。本書は改革のあり方の理想を記すものとして、江戸時代以来、今日まで読みつがれており、経営のバイブルとさえ言われているものである。

連休明けの21日、衆議院が解散した。解散までの自民党内のゴタゴタは、一体何だったのだろうか? 両院議員懇談会での反麻生派議員の言動はなんなのか・・。

東国原知事橋下知事等による「地方分権」の盛り上がりは、一体どこにいってしまったのか・・。

会社においても、経費削減を叫んでいる幹部が、遊興費を平気な顔をして会社経費で処理をする・・。

率先垂範(そっせんすいはん)がなければ、誰も付いてこないし、支持も得られないのである。

我々の多くは、自分に、我々の会社に、自部門に・・。 政治家は、自分の選挙に、自分の党に・・。 官僚は、退職後の自分たちの職場確保に・・。

多くは、内側の成果に焦点を合わせている。表面的、形式的、数値的な組織活動ではなく、

 顧客に、社会に、人のために、他の部門に・・。

内ではなく、外に対し貢献することを真剣に考えなければ、この国の将来はないと思っている。