「問い」と「答え」

コミュニケーションは、プロジェクトに限らず人間社会においてはどんな場合でも重要である。

コミュニケーションが成立したかどうかは、「現状に対する認識の一致」と「目的に対する思いの一致」ができたかどうかで判断できる。

すなわち、「現状はどうなっているか・・」、そこで「課題は何か!」についての、関係者の認識を一致させ、目的を達成しようとする思いを一致させることである。

コミュニケーションの手段にもいろいろある。紙を使ったり、メールや電話をしたり、面と向って会話をしたり・・ と。

手段に関わらず、コミュニケーションは、「問い」と「答え」の連鎖で構成される。その流れの中で、「認識の一致」と「思いの一致」が醸成されていくのである。

とかく人間は、何か問題が発生すると、すぐにそれに対する「答え」を求めたがる。せっかちな動物である・・。

したがって、せっかくチームや関係者で話し合いをしていても、せっかちに結論を出し、それが指示の形になる。これは「答え」を共有させようとする行動であり、「問い」の共有化はされていないのである。

「答え」を共有させようとすると、その組織は専制的な雰囲気になり、自由な発想や発言がなくなる。また、それを続けていくと「答え」を与えないと動けない組織になってくる。しかも、不満が潜在してくる。
また、答えをつくるリーダーの器以上に組織は成長しなくなる。誰も考えなくなるから、共有化された「答え」はすぐに陳腐化してくる。

それに対して、明確な「問い」を発し、「問い」を共有化しようとすると、組織はオープンになり、談論風発(だんろんふうはつ)してくる。
共有化された問いに対して関係者が必死に考えるから創造力も鍛えられてくる。

「問い」を共有化し、それに対して自由な「答え」を関係者が遠慮なく発言し、その中から まとまった方向性が出て、皆が納得した結論や決定がなされると「認識の一致」と「思いの一致」が達成されるようになる。

最後に、プロジェクトにおいての「問い」の共有化について、注意すべきことが一つある。

それは、プロジェクトリーダの「答え(指示)」の方向にプロジェクトメンバーは動くのではなく、「問い」の方向に流されていくということである。

過去の質問ばかりすれば、メンバーは過去に生きるようになる。またリスク回避の質問ばかりすれば、失敗を恐れるだけになる。
「問い」は、できるだけ未来に対して、いかに見通すか・・、いかに行動するか・・ という視点ですべきと思う。